鈴木達央 Tatsuhisa Suzuki Official Website

DIARY

魔王学院の不適合者(正解不正解 feat.アノス・ヴォルディゴード)

2020年7月31日

四話のオープニングが正解不正解のアノスバージョンだったんですが、皆さん知っていましたか。飛ばした、とか、見てない、とかいう人は是非観ていただけたら嬉しいです。

今回はそんな珍しい「主題歌をキャラクターで歌う」という時の話です。
お付き合いいただけたら。

最初は、アニメ版につくカップリングとしてお話をいただきました。
その上で、最初に話を持ってきたマネージャーに「本当に大丈夫か、CIVILIANサイドに確認して改めて俺に話してほしい。でなけりゃ受けない。」と言いました。

何故か。

キャラクターソングというものは、そもそもそのキャラクターに合わせて書かれた楽曲を歌うことによって成立するコンテンツだと認識しています。
ですが、今回はCIVILIANの楽曲。アーティストの楽曲が基となると話は違います。気軽に受け取ってはいけません。
自身が作曲や制作に関わることがあるからこそ、産みの苦しみというものが分かります。作る時にどれほど意思や意味や感情を注ぎ込むかが分かります。だからこそ、気軽には触れれません。そこに土足で踏み込むようなことはしたく無いのです。
ですので、面倒だろうと、改めてしっかりと確認を取った上で受けようと思い、CIVILIANサイドが納得いっていない状況が少しでも見えれば、この話はお断りするつもりでした。

結果はCIVILIANサイドからも良きお返事も頂き、今回のレコーディングとなりました。

レコーディングは思った以上に和やかな雰囲気で進み始めました。
共通の知人がいたことで、コヤマさんとも打ち解け、機材の話や普段のレコーディングの話、ウチのエンジニアでもある方との話だったり、思った以上に音楽の話で盛り上がり、ちっともレコーディングが始まらないくらいに。
楽しい話は尽きないのですが、時間は有限ですので主題のレコーディングへと進みます。
最初、アノスの声の質的にオクターブ下で歌おうかと思っていたのですが、テストで歌ってみた時に、元のキーでもうまい落とし所が自分の中で見つかり、そのままのキーで歌うことになりました。
一番初めは自分自身で歌うとどうなるかを聞いていただき、その後歌いながらだんだんとアノスに変わっていく様を聞いていただき、最後にフルでアノスバージョンを聞いていただき、声の雰囲気、キャラとのイメージと曲に込められたメッセージとの相互性や価値観のすり合わせ、各所ニュアンスの有り無しなどを簡単に詰めて、本番のレコーディングとなりました。

キャラクターで歌うというのは、そもそも自分の楽な喉の場所で歌うわけでは無いので、実は音程やニュアンスのコントロールはとても難しい歌唱法です。
アノスならこう歌いそう。アノスならこう歌う。アノスならこう歌わない。そんな事を微細に考えながらレコーディングするので、実はとても頭を使います。要するに演技しながら歌う上に、音程を気にしながら、テンポを気にしながら、歌のニュアンスを気にしながら歌うのですから、頭を常に使っている感じです。
うまい例え方では無いのかもしれませんが、「掃除をしながらやらなければいけない課題を列挙し、その上でこれからの食事の献立を考えつつ明日の予定を組みながら、洗濯物をいつ取り込もうか考える」くらいの事をずっとする感じです。伝わるかな。伝わったら良いな。

とはいえ、思った以上に気持ちが乗るのが早く、アノスの考える正解不正解、そしてCIVILIANの持つ正解不正解の世界を同居させる事が早い段階で作れたので、レコーディング自体はすんなり終わりました。
その日は残った時間を音楽の話などに当てて、スタッフに「タツさん、そろそろ次に行きましょう。」と急かされつつスタジオを後にしました。

数日後、スタッフからアノスのボーカルが入った楽曲が送られてきて、細かいチェックをしながらより良くなるように、自分がOLDCODEXでやっている時と同じように微調整のお願いを伝え、何度かやりとりをした後、完成へと向かいました。

そこでです。
実はレコーディングの時に、アニメサイドのスタッフから「これ、アニメでも使いたいなぁ」とポツリと話しているのを聞き「またまた。主題歌はCIVILIANだよ、そんな簡単に良い出来になりそうだからって贅沢言っちゃいかんよ。」などと話していたのですが、ミックスされた音源が来た時に「四話でアノスバージョンを流すことにしました。」との連絡が。
いや、嬉しいのは確かなんですが、それを快諾してくださったCIVILIAN。作品サイド。製作委員会の方々。どれだけ優しいんだ。と本気で思ったのをすごく覚えています。

何度も書きますが、アーティストの大切な楽曲です。作品もそのためのオープニングを作っています。気楽にできることでは無いのです。

ですが、それを快諾してくださった。

俺はその優しさがとても嬉しく、そしてその優しさが嬉しいからこそ、そこから先のアフレコをより気を引き締めて良き形にせねば、と意気込む事にいたりました。

Twitterなどで、気軽に宣伝していますが、今回のオープニングにはこんな裏話があったのです。
作品制作は一人でできる事ではありません。一人一人が責任や誇りを持って行います。
その中で、今回はそんな皆様の優しさに触れた話をここに記させていただきました。
良き作品になるよう、全員が同じ景色を目指し、柔軟に対応した今回の話。
個人的になかなかに感動することなんですよ。
だって、あんまり観たことないでしょ、こんなオープニング。それが一番の理由です。

色々と書きましたが、どれもこれも作品を楽しんで観ていただけるのであれば、それが我々にとっての至上の喜びです。
この後も魔王学院の不適合者をご覧いただく上での、良き調味料となれば幸いです。